クラウド版:文書管理システムの特長と機能の概要について

クラウド版:建物LCMシステムの姉妹システムとして、「クラウド版:文書管理システム」がリリースされました。

従来の紙資料を主体とした文書管理方式をそのまま活かしながら「クラウド版:文書管理システム」によって、従来から紙の文書をフォルダーに綴じて管理・保管するのファイル管理方式を維持したまま更に強力な文書管理を行うことができます。

紙による文書管理方法については下記のリンクを参照下さい。
・ISO9000実践企業も採用する紙資料による文書管理方法の概要を見る
・紙資料による文書管理を強力に支援する文書管理システムの概要を見る

クラウド版:文書管理システムの特長と機能の概要を以下の表にまとめました。

クラウド版:文書管理支援システムの機能紹介

文書管理支援システムの特長と対象ユーザー
システムの特長 ISO9000文書管理手法として企業で実際に採用されている文書管理方式に準拠。
無理なく速やかに導入可能。
日常業務の様々なシーンで活用出来る便利ツールを一つに集約。
利用対象 一般企業、マンション管理組合などでのグループ利用。もちろん個人専用の日常業務支援ツールとしての利用も可。
文書管理支援システムの機能と概要
機能 概要
文書管理 プロジェクト(または建物)単位の情報管理。
文書管理情報の検索や一括CSVファイル入/出力。
文書関連資料(写真,画像、PDF、Word、Excel、パワーポイント各ファイル)のクラウド上への安全保存。
・文書管理内容 議事録、成果物、参考資料の情報管理。
・文書I/O管理内容 資料・文書類の利害関係者(顧客、協力業者、社内や管理組合)とのInput/Output(受/発信)資料情報管理。
タスク情報管理 計画業務(タスク)とそのサブタスク(アクション)の情報管理と進捗管理。
タスク内アクションの情報管理と関連するマイ日誌への紐付け。
タスク・アクション情報の一括CSVファイル入/出力。
ニュース サイト訪問一般ユーザまたはシステム利用者限定のニュース掲示板機能。グループ全員向けの情報伝達効果大。
ブログ システムユーザーが自由に掲示・閲覧できるマイブログ機能。業務連絡や情報交換への活用効果大。
マイ日誌 ユーザーが自由に思いつくことを何でもメモっておき、検索・外部ファイル書出しできる個人用のメモ機能。
カレンダー 各ユーザー個人用のイベントカレンダー機能。
緊急時メール配信 メールの登録グループ(理事会、自治会、防火管理者、全居住者など)全員に向けた同時送信機能。緊急時の情報連絡手段の効果大。

・ISO900実践企業も採用する文書管理の4つの基本ルールについて
・資料の分類保管フォルダー内のインデックス・タグの付け方について:具体例
・基本ルールで保管されている文書の検索の仕方:検索例

「文書管理システムについてのお問い合わせはこちらから・・・」

基本ルールに基づきフォルダーに保管されている文書の検索の仕方:検索例

紙文書類保管の基本ルールに基づき保管されたフォルダーから目的の文書を見つけ出す方法について説明します。

 例えば、「あるプロジェクトで、ある客先から受け取った資料」を探す場合は、以下の3つのルールをヒントに目的資料を見つけ出すことができます。
まず、その資料が保管されている場所について下表のように想像して見ます。

3つのルールをヒントに目的資料を検出:検索例
(ルール1):探したいその文書が綴じられている可能性の高いフォルダーに見当を付ける。
      ・恐らくその資料は、該当するプロジェクト名が付された「管理フォルダー」内に存在するはずでしょう。
(ルール2):探したいその文書が綴じられている可能性の高い文書保管分類用インデックス・タグの名称に見当をつける。
      ・客先から受領した資料なので、インデックス・タグ名は「客先から」のところに存在するはずです。
(ルール3):綴じられている順番(受領期日の古い順)に見当を付ける。
      ・もしもここで、客先からもらったその資料の大まかな年月が分かっていれば、更に簡単にその資料を探し出すことができるでしょう。綴じられているのは期日の古い順に、新しいファイルは手前になるように綴じられているはずなので、綴じられている各ファイルの期日から、その資料の綴じられている前後が容易に分かります。

 以上の3つのステップで誰でも簡単にその文書の保管場所を見つけ出すことができることをご理解いただけたでしょう。

 ファイルを保管・管理する際、たったこれだけの工夫で、従来から行っている紙のみの文書管理を効率的に行うことができますので、是非、お試しください。事実、ISO9000を導入している多くの企業において、文書管理にこの紙ベースの文書管理手法を現在も利用され、十分に機能しています。

文書管理方法の関連リンク
・紙文書類保管方法の基本ルールについて
・資料分類保管のための管理フォルダーとそのインデックス・タグの付け方について:具体例

資料分類保管のための文書管理フォルダーとそのインデックス・タグの付け方について:具体例

 今回は、先に紹介した紙文書類保管方法の基本ルールに続き、実際に紙文書資料を管理保管する際の文書管理フォルダーとその中に分類して綴じる際の適切なインデックス・タグの付け方の具体例として、一般企業とマンション管理組合の場合について説明します。

【一般企業の場合について】:
 文書を綴じるフォルダーに付けるフォルダー名の名称の付け方については、次の表に示すような考え方でご自身の職種に合った適切な名称を付けるのが良いでしょう。

フォルダーとインデックス・タグの付け方(一般企業の場合の具体例)
営業部門の場合の例:
・顧客と何度も取引を行う継続的な関係場合は「顧客名とその取引案件」ごとにフォルダーを作成するのが良いでしょう。
・その中に「ルール2」の文書保管分類用インデックス・タグを設けて各文書を管理します。
住宅販売や自動車販売等、一契約ごとに顧客との関係が完結する場合の例:
・商品の種類や取引の日付でフォルダーを作成するのが良いでしょう。
・この場合は「ルール2」の文書保管分類用インデックス・タグをわざわざ設けて管理する必要は無いかもしれませんね。
しかし、契約後もアフターサービス等で顧客との関係性をきちっと管理し、フォローし続ける必要がある場合は、「ルール2」の文書保管分類用インデックス・タグを設けて各文書を管理した方が良いでしょう。
実務部門や研究・開発部門、およびフリーランスとして仕事をするような場合の例:
・仕事のプロジェクトごとにフォルダーを作成します。
・その中に「ルール2」の文書保管分類用インデックス・タグを設けて各文書を管理します。

【マンション管理組合の場合について】:
 ここでは特に文書管理について日頃の頭を悩ましているマンション管理組合の場合を例にその具体例を示しました。

フォルダーとインデックス・タグの付け方(マンション管理組合の場合の具体例)
マンション管理組合役員や理事長業務をするような場合の例:
・竣工図書類はフォルダー名を「竣工図書」とし、
・その中に「ルール2」の文書保管分類用インデックス・タグ「成果品」を設けて各図書を管理します。
・理事長が管理する重要文書類(例えば,契約書など理事長署名と押印を伴うような文書類)はフォルダー名を「理事長管理文書」などとします。
・その中に「ルール2」の文書保管分類用インデックス・タグを設けて各文書を管理します。
・定期的にメンテナンス会社や管理会社から届く報告書類などの場合は、フォルダー名「点検・作業報告書」などとします。
・この場合は、「ルール2」の文書保管分類用インデックス・タグの代わりに報告書類名称(例えば「昇降機定期メンテ報告書」や「管理会社報告書」など)をインデックス・タグ名称として管理するのが良いでしょう。
・大規模修繕のような大きな案件などはその案件(プロジェクト)ごとにフォルダーを作成します。
その中に「ルール2」の文書保管分類用インデックス・タグを設けて各文書を管理します。
・小規模修繕やメンテナンス関連の書類は、長期修繕計画の中の修繕・更新部位や項目と連動させて管理します。フォルダー名は「建築修繕工事(外部インデックス)」、「建築修繕工事(内部)」、「電気設備修繕工事」、「給排水設備修繕工事」、「空調設備修繕工事」、「輸送設備修繕工事」、「防災設備修繕工事」などでフォルダーを分けておくと便利です。
こうしておくことで,長期修繕計画の見直しの際、建築部位や設備機器の過去の修繕履歴、工事費用などの参考資料として効率的に活用することができます。しかし、資料が少ない場合はフォルダー名称を「修繕工事」とだけにしておいても良いでしょう。
・そしてその中に「ルール2」の文書保管分類用インデックス・タグを設けて各資料を管理します。(但し、管理組合の場合の「ルール2」の各々次のタグは、「客先」を「管理組合員」、「客先」を「管理組合員」、「メーカー」を「業者や管理委託会社」、「社内」を「理事などの理事会メンバー」のように読み替えます。こうしても慣れれば特に違和感は感じられないと思います。)

以上、管理対象に応じた管理フォルダー内への具体的なインデックス・タグの付け方の具体例をご紹介しました。

ISO9000(国際品質管理システム)実践企業も採用の文書管理方法の紹介

ここでは、ISO9000(国際標準化機構の品質マネジメントシステム)の実践企業においても採用されている紙資料による文書管理方法について紹介します。

この文書管理方法は実際にISO9000導入企業などでにおいて活用され、毎年実施される内部および外部監査にも十分対応できている実用的な文書管理方法の一つです。

文書管理は概ね以下に説明する4つのルールに基づいて実施されています。

【紙文書類保管方法の基本ルール】

 文書類は以下の4つの保管ルールに従って、これまで通りの紙によるフォルダーファイル(市販のA4サイズフォルダー)に保管・管理します。

紙文書類保管方法の基本ルール
ルール1: ファイルを綴じるフォルダーに管理対象とする文書・資料内容に最も相応しい「管理フォルダー名」を付ける。
ルール2: フォルダー内の文書保管分類用インデックス・タグとして以下の9つのインデックス・タグを設ける。
 「議事録」、「成果品」、「客先から」、「客先へ」、「メーカーから」、「メーカーへ」、「社内から」、「社内へ」および「参考資料」の9種類のインデックス・タグを設ける。
 なお、客先、メーカー、社内という3つの名称については、必ずしもこの名称と数に限定するものではありません。
 管理対象とする文書に応じた受・発信相手先として最も適した名称や数のインデックス名称としても問題はありません。
しかし、経験上、これら9種類のインデックスさえあれば、次に説明する各インデックス・タグに対する資料保管時の基本的分類ルールさえ覚えておけば、如何なる文書であっても保管すべきインデックス・タグを容易に判断することが出来ます。
ルール3: 下記の(1)〜(9)の文書保管分類用インデックス・タグとそこに分類保管する文書の種類の分類ルールを下記に示します。
(タグ1)
「議事録」
会議などの議事録や記録メモなどをここに分類する。
(タグ2)
「成果品」
ファイルの管理主体が(自作・外注を問わず)作成した資料や報告書などの成果品などをここに分類する。
(以下の3)〜8)までは「IO(アイ・オー)管理」と呼ばれる、いわゆる入・出文書を分離して保管するための保管方法となります。)
(タグ3)
「客先から」
管理主体から見て顧客に該当するところから得た(インプット)文書・資料などをここに分類する。
(タグ4)
「客先へ」
管理主体から見て顧客に該当するところに対して提出・送付(アウトプット)した文書・資料(控え資料)などをここに分類する。
(タグ5)
「メーカーから」
管理主体から見て発注先に該当するところから得た(インプット)文書・資料などをここに分類する。
(タグ6)
「メーカーへ」
管理主体から見て発注先に該当するところに対して提出・送付(アウトプット)した文書・資料(控え資料)などをここに分類する。
(タグ7)
「社内から」
管理主体自身の組織内部に該当するところから得た(インプット)文書・資料などをここに分類する。
(タグ8)
「社内へ」
管理主体自身の組織内部に該当するところに対して提出・送付(アウトプット)した文書・資料(控え資料)などをここに分類する。
(タグ9)
「参考資料」
上記1)〜8)には該当しないが、資料として参考となる資料や文書などをここに分類する。
(この方法で分類ルールに基づいて文書資料を管理しておくことで、該当する文書類の検索作業が格段に簡単になります。)
ルール4: 文書や資料をルール3の分類方法に従ってその該当する文書分類用インデックス・タグのもとに、その発生期日の新しいものが手前(つまり、インデックス・タグの直下には常に最も新しい発生期日の資料が時系列的に綴じられて行くことになります)になるよう、綴じてどんどん保管して行く。

以上が、紙資料による文書管理する際のISO9000実践企業でも採用されている非常に簡単で実用的な文書管理の基本ルールの一つをご紹介しました。

長期修繕計画の活用方法について

長期修繕計画の活用方法
 長期修繕計画は、修繕・更新の時期と費用の把握に利用されるだけでなく、建物の「継続利用期間」・「リニューアルか建替えか、あるいは売却か」・「自社ビルか賃貸借か」などの経営的判断にも利用できます。
上記に挙げた経営的判断の方法につきましては、今後、随時ごご紹介してゆきたいと思います。
まずここでは、LCMシステムにおけるこれらの経済性評価を含む、以下の長期修繕計画の主な活用方法についてご紹介します。

ぶどうの木
※毎朝お届けする水彩画 四季水彩より

繕積立資金計画作成への活用

:長期修繕計画は修繕積立資金計画作成のための基礎情報です
 例えばマンションの場合、将来の大規模修繕計画のための資金確保の手立てとして重要となるのは「修繕積立資金計画の作成」となるでしょう。その際の拠り所となるデータは、将来のいつ頃にどの部分の建物や設備の修繕や更新が発生し、どれくらいの費用が必要かの情報を持っている長期修繕計画となります。特に大規模修繕工事などの一度に多額の費用が必要となる際に、資金ショート(資金不足)にならないよう、年間修繕積立額を事前に(できれば竣工入居時点で)算出し、無理の無い計画的に積み立てておくことが重要です。

年間修繕積立額クラフ
長期修繕計画情報に基づいた所要年間修繕積立額の算出グラフ表示例(お試し版LCMシステムから):グラフをクリックすると拡大表示されます

 上のグラフは、建物の竣工初年目から20年間までの期間の長期修繕計画情報に基づいて長期修繕工事を実施しようとした場合、年間(この場合は20年間と通じて)の所要修繕積立金額を算出した場合の例を示しています。
但し、この場合は、「建築」、「外部」の「一般鉄部塗装と外壁タイル補修」に対する長期修繕計画情報のみを対象として算出しています。
 このケースの場合は、竣工後15年目(2030年)に予定されている外壁タイル補修工事費用および16年目に予定されている4回目の一般鉄部塗装工事において資金ショートをクリアすべく年間所要修繕積立金額 [ ※割引率:4%、インフレ率:ゼロ を仮定]が決まっていることが上・下両グラフから容易に読み取れます。
なお、上グラフの要修繕積立額グラフが直線ではなく下方に緩やかにカーブしているのは、割引率を「4%」に設定されているためです。(割引率:0%、インフレ率:ゼロ、とした場合は所要修繕積立額のグラフは直線になります。)

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履歴情報管理への活用

:長期修繕計画情報に関連づけることで活かされます
修繕や障害の履歴を記録しておくことによって将来の大規模な修繕時期の把握が可能となり、適切な時期に延命策を施すことができるようになります。
また、長期修繕計画と一体で管理することで、修繕にかかる費用の予測精度をあげることができ、無駄や修繕の重複が無く、且つ効果的なタイミングでの修繕や更新工事の計画・実施には「設備や建築部位の障害発生やその対処」などの履歴情報の記録が重要な役割を果たします。さらに長期修繕計画の将来の修繕周期や修繕費用の見直しにも役立てることが出来ます。
これらの設備や建築部位の履歴情報を関連づけしておくための建物の構成部位である建築部位や設備の情報は長期修繕計画にあります。
このように過去においてその建築部位や設備に発生したトラブルや実施された修繕・補修工事の履歴情報(いわゆる建物のカルテ記録)が修繕計画に活かされます。(トップに戻る)

建物の経済的寿命評価への活用

:長期修繕計画は建物の経済性評価のための基礎情報です
 繕積立資金計画では長期修繕計画情報の修繕・更新費用の各支出タイミングにおいて資金ショート(つまり各支出タイミングにおいて過去からの積立金累積額が過去からの修繕・更新支出累積額を下回ること)を起こさせないことに注目しますが、
一方、建物の使用期間(つまり使用開始時点をゼロとする使用各年までの期間)をパラメータとして、その期間中に支出する過去からの修繕・更新費用総額を使用期間中の平均支出コスト(つまり年間平均支出額)が夫々の使用期間を通じてどれくらいになるかに注目します。言い換えれば、将来いつ頃までこの施設を維持・保全して使用し続けるのが「維持・保全コスト的に経済的(つまり、建物の経済的寿命)なのだろうか」と言う点に注目します。
具体的には、施設の使用期間中における平均年間修繕改修コストが最も少なく、且つ出来るだけ長期間となる時期を検討することになります。
 この結果から、指定期間中の建物の保全維持レベルに対する将来、最低限必要となる修繕・更新コストを容易に知ることができます。また、目標計画案は将来の修繕・更新計画(実計)案作成(投資時期、投資額の目安など)の作成の参考となります。下図にその例を示します。

Gモデル
修繕・更新投資分析(コストから見た経済的寿命を探る)(LCMシステム:Gモデルより):グラフをクリックすると拡大表示されます

 図は、建物の健全性の維持範囲を常に目標FCI値※([2]管理目標FCI値)を超えない程度に、いわばある種の理想的な修繕改修投資方針を維持しながら目標年(2030年)までこの建物を保全し続けた場合(これを「目標計画案」と呼ぶことにします)を示しています。これに必要となる平均年間修繕費用(つまり、マンションの場合の必要な定額の年間修繕積立額に相当します)が目標計画案([C1]所要修繕コスト平均年価)と一方「実計画案」、つまり現在の長期修繕実施計画案([C2]所要修繕コスト平均年価 )とで各々どれくらいになるかをLCMシステムのGモデル分析機能によって算出した例です。
 この例では、過去36年間の所要修繕コスト平均年価が2030年において、各々[C1]目標計画案:2.4百万円/年間と[C2]実計画案:3.5百万円/年間となっており、2023年に次いで低い値となることが分かります。(つまり、修繕改修コストの観点からこの建物の経済性寿命を検討した場合、29年目の2023年あるいは36年目の2030年辺りであることが分かります。) (※:FCI値についての詳しくは「システムの紹介」システムで用いられる用語の説明のページを参照具ださい。)

[C1]目標計画案と[C2]実計画案との所要修繕コスト平均年価の差異について
 なお、ここで[C1]目標計画案の方が[C2]実計画案よりも所要修繕コスト平均年価が小さい値を示している理由は、上述しました両者における修繕改修投資方針の違いに起因しています。
 [C1]目標計画案では管理目標FCI値を超えない範囲で修繕を行うという方針のため、逆に言うと常に管理目標FCI値以内の不具合を許容した状態で保全管理を行う、ということです。
 一方、[C2]実計画案では、改修時期に到達した時点で必要な修繕・更新投資を行うという方針(つまり所要改修費を全額投資する)のため、その時点では管理目標FCI値は一旦、「ゼロ」に戻すという保全管理を行います。両者の所要修繕コスト平均年価の差異はこのためです。

管理目標FCI値をパラメータとした建物の健全性の維持目標レベルの探索シミュレーションと実計画への反映について
 [C1]目標計画案における管理目標FCI値をパラメータとしてシミュレーションすることで、建物の健全性の維持レベルに対応した所要修繕コスト平均年価の変動範囲を把握することができます。このことによって、すべての建物に対して一律の修繕改修投資を適用するのではなく、建物の重要度やニーズに合った夫々の建物健全性維持レベルを検討し、適用する、といった考え方もできるのではないでしょうか。

 こうして得られた[C1]目標計画案を参考にして、それに出来るだけ近い修繕・更新計画案を作成することで、建物のトータル改修コストを意識した長期修繕計画案を検討することができます。

 なお、コストを修繕・更新費用だけでなく、他の運用コストなどと施設収益を共に考慮にすることで、本来の建物の経済性評価を行うことができ、商業施設などには重要な評価要素の一つとなります。しかし、この際の分析の拠り所となるデータとしては、修繕改修コストの発生時期とコストの情報を持っている長期修繕計画が重要な役割を果たします。(トップに戻る)

 割引率とは:
割引率とは、簡単に言いますと建物を所有する企業の事業活動力の強さを示す値であると言えます。
 つまり、その企業が事業投資活動によって年間どれくらいの利益率を生み出す能力があるか、を示す値と考えて頂いて良いかと思います。
従って、事業利益率(ROE:株主資本利益率 Return on Equity)の高い企業においては、当然、経済性評価を行う際に用いられる割引率は大きい値を用いて検討されることになります。最終的にその企業の割引率をお決めになるのは財務担当役員です。)(戻る)

長期修繕計画の概要とその内容について

 長期修繕計画の概要とその内容について

「建物の長期修繕計画」の重要性について

「建物の長期修繕計画」はなぜ重要なのでしょうか?
 建物はその経年とともに建設当初の機能が徐々に低下してゆきます。この現象は「経年劣化」と呼ばれ、その進行を止めることはできません。劣化の進行をそのまま放置し続けるといろんな障害が発生して建物全体の機能を損ねるだけでなく、その資産価値をも著しく低下させることにもなります。
 しかし、適切なタイミングで修繕や更新を実施し、この低下した機能を回復させることによって建物の寿命を延ばすことが出来ます。トップに戻る

坂道
※毎朝お届けする水彩画 四季水彩より

 そのために、一般に「長期修繕計画」と呼ばれる、建物各部について、建物の生涯期間中に予想される経年劣化の進行度に合わせた修繕などのケアの時期を表記した計画表を予め作成しておき、それに基づいた建物の維持・管理と共に修繕費の資金計画をも併せて準備しておく手法が汎く採用されています。

 建物を長期間にわたって快適で安全な居住空間として維持し、また、大切な資産としての価値を保全してゆくためには、建物に対する長期修繕計画をたてて保守・点検や経常修繕を適切なタイミングで行ってゆことが重要です。
 更に、分譲マンションなどの管理組合ではこの計画に基づき無理のない「修繕積立金」を計画的に準備しておくことが大変重要となります。
 長期修繕計画がないと、修繕工事の適切な実施時期が判断できないばかりか、将来の修繕工事に必要な額の修繕積立資金が確保できない、などという事態に陥ってしまうことにもなりかねません。

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※毎朝お届けする水彩画 四季水彩より

長期修繕計画とは具体的にどのようなものなのですか?

 長期修繕計画の具体的な内容は、修繕工事の対象となる部分・個所(例えば屋上の防水、鉄部の塗装、外壁タイルやサッシュ廻りシーリングなどの建築工事、給・排水管の取り換えや電気設備の取り換え等の設備工事、駐車場や駐輪場の補修等の外構工事などの)に分類された単位ごとに、通常、その建物の使用期間である30年から60年の期間中のいつ頃に保守・点検調査や経常修繕を実施すべきかを、その工事費用(概算額)と共に事前に作成しておく、いわゆる『建物の健康・維持生涯プラン表』のようなものです。トップに戻る

長期修繕計画とはいつ作成するものですか?

 本来、長期修繕計画は建物が建てられた当初に用意されておくべきものです。
 もしもまだお持ちでないのなら、できるだけ早い時期に作成しておくことをお奨めします。 なぜならば、建物の竣工直後であれば、修繕工事の対象となる部位や個所の数量および工事費用など、長期修繕計画の作成に必要な正確なデータや情報が手に入り易いからです。
 かなりの期間が過ぎてからでは最悪の場合、最初から建物各部の数量を拾い直さなければならず、計画の作成に多大な費用と時間・労力が必要になってしまう可能性があるからです。トップに戻る

さくら
※毎朝お届けする水彩画 四季水彩より

長期修繕計画はだれが作成するのですか?

 個々の建物に適した長期修繕計画を作成するためには専門的な知識が必要になりますので、作成業務は外部の専門組織(ビル管理会社、マンション分譲会社、施工会社、設計事務所、その他NPO法人などの公的団体等)に委託する場合が多いようです。
 しかし、作成の主体はあくまで建物の所有者である企業や分譲マンションの場合はマンションの管理組合です。トップに戻る

長期修繕計画は一回作成すれば終わりですか?

 いいえ、長期修繕計画は建物の経年に伴い見直しが必要です。長期修繕計画上の修繕の実施(予定)時期は一応の目安でしかありません。
 建物の部位や設備の劣化進行の状況は、建物の個々の部位のおかれている環境状態等によっても劣化の進行度が異なることもあるため、個々の修繕周期を見直すことも必要です。
 建物の部位や設備の劣化の進行状況によっては予定を繰り上げて修繕工事を実施したり、場合によっては実施時期を数年先送りしても良い場合もあり得ます。
 また、修繕費用についても取り巻く経済情勢の変動によっては長期修繕計画のとおりになるとは限りません。このため、長期修繕計画は定期的(概ね3年~5年ごと)に見直し、できるだけ常に現状を反映させておくことが大切です。更により正確な長期修繕計画の見直しは、大規模な修繕の実施が予定されている時期の数年前に実施される、建物部位に対する「劣化診断調査」の際と、大規模修繕実施直後に行われるのが一般的です。

 なお長期修繕計画の見直しの際の更に重要なこととしては、過去においてその部位に発生したトラブルや実施された修繕・補修工事の履歴情報(いわゆる建物のカルテ記録)を修繕計画に活かすことです。
 しかし、これらの履歴情報の維持・管理を主体となって行うのはビル管理会社や施工会社などの誰でもなく、ビルオーナーマンション管理組合ご自身です。(なぜならば、特にマンションの場合は、たとえ管理会社と言えどもその管理会社を通さずに発注された工事の詳しい情報については把握されておらず、ましてやそれらの記録・保存までをも彼らに期待することなどは到底望めませんから・・・)

 長期修繕計画は建物維持保全サイクルの各フェーズにおいても活用される重要な情報として位置づけられています。長期修繕計画の活用方法については、「長期修繕計画の活用方法」のページも参照ください。
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